前回の記事にて、ビジネスモデルキャンバスの9つの要素を説明しましたが、いざ実践してみようとしても難しいのではないでしょうか。
今回はビジネスモデルを把握するために利用できる実務上の3つのコツについてご紹介します。
ビジネスモデルキャンバスとは?ビジネスを構成する9つの要素を例を挙げて解説 | ウェブ解析ナレッジ
ビジネスモデルを理解、共有するためのフレームワークです。9つの要素に整理して考えますが、まずはこの9つの要素について説明します。各要素の見るべきポイントと併せて参考にしてください。
目次
実務で使うハードルが高い理由
コツをご紹介する前に、実務で使おうとした時にどの点がハードルとなるのかについて説明をします。
まとめるべき要素が多い
ビジネスモデルキャンバスが、最初ハードルが高いように感じる大きな原因は要素が9つと多いことです。
数だけではなく、キャンバス上に配置する場所と共に覚えないといけないので、あれ?どこだっけ? これでいいんだっけ?となりがちです。

把握すべき範囲が広い
要素が多いだけでなく、把握すべき範囲が広いこともネックになりがちです。
ある企業は仕入れに特徴があることは有名で知っていても販売の特徴は知らなかったり、商流はよく分かっていてもコストや決済条件などは全く分からなかったり、埋まらない要素が出てきます。
要素間の流れが分からない
ビジネスモデルキャンバスは、要素が単純に埋まるだけでなく、個々の情報が有機的に関連づけられることで高い価値を発揮します。
仮にすべての要素が埋まっても、各要素ごとに考えてしまったせいで、要素間の関係性や流れがいまいち分からないということがあります。
断片情報が並んでいるだけで、目的や結論が見えず、中身が無い状態になるということです。
専門のコンサルタントや企画屋さんでない限り、これだけの情報をまとめることは至難の業でしょう。
ビジネスモデルを把握するための3つの流れ
解決のカギは、一部の業界や企業で基本として教わる「ビジネスモデルを把握するための3つの段階」を踏むことです。
これは調べやすい事柄から、流れを持ってビジネスを捉えることで、より早く理解し、深堀していける考え方です。
基本的な考え方はコアとなる部分を捉えて、全体の主要な流れを把握することが重要になります。
その「コアとなる基本の流れ」が最も重要なポイントとなり、そこから枝葉が広がるように、細かい要素が配置されると考えるのです。

具体的には3つの手順に従うことで、ビジネスモデルを理解していきます。
- 売上の源泉を把握する
- 商流から強み・弱みを導き出す
- コストから経営を評価する
各手順について、以下詳細をご紹介します。
①売上の源泉を把握する
まず把握すべきは、売上の金額に対して、5W3Hで考えましょう。
特に「誰」(Who)から「何の対価」(What)としての売上なのかを考えると良いです。
例えば、Googleと言えば「ユーザーの利便性の高い検索エンジン」が特徴的ですが、収益の対象は主に「企業から広告費」がコアの部分になります。
誤って考えがちな人は、「対象がユーザーで利便性の高い検索エンジンを提供している」と考えますが、収益と結びついていないのです。
このように事業の特徴や向いている方向ではなく、収益の特徴と対象をまずきちんと定めることが重要です。
また、大きな会社であれば複数事業を行っているので、事業ごとの売上の割合も捉えておきましょう。売上に影響があっても、事業規模が小さい事業かもしれません。割合は重要になります。
総じて、最初のステップとして、ビジネスモデルキャンバスの「収益」と「顧客」&「存在価値」がきちんと連動していることが重要になります。
②商流から強み・弱みを導き出す
次に、仕入先・販売先が「なぜ」(Why)取引をしてくれるのか、という観点から強み・弱みを考えていきます。この強み・弱みがその企業の特徴ということになります。
この考え方は、金融機関の融資担当が経営者の方向けに自社の特徴を考えてもらう時にも使う手法で、取引先にとってのメリットから自社の存在意義を見出していくことができます。
例えば、Googleの例で言えば「なぜ企業は広告費を出すのかな」「なぜユーザーはGoogle検索を利用するのかな」という観点で特徴を考えていくことになります。
一例としては
- なぜ企業は広告費を出すのか→ピンポイントかつ多くのユーザーに効果的な広告訴求ができる
- なぜユーザーが利用するのか→求めている情報が適切に手に入るから
など、サービスの質の高さに関するものが挙げられるかなと思います。
そして、そのサービスの質の高さを生み出すために、質の高いエンジニアや大規模なサーバーを保有しており、データをきちんとかき集めるための活動を行っているなども考えられます。
上記はあくまで一例ですが、このように「顧客」と「パートナー」という観点からサービスの特徴を捉えることを行っていきます。
そしてそれらの特徴は、ビジネスモデルキャンバスで言うところの、「顧客との関係」「チャネル」「主要活動」「リソース」などで表現されます。
③コストから経営を評価する
最後にコストを評価しましょう。
これは資金が主に何に使われていて、どのような効果を発揮し、売上にどう紐づくのかを可視化する作業です。
それまでに炙り出した各要素と紐づかない投資をしている場合、ビジネスの主要な部分に影響しない投資であり、無駄な出費である可能性が高いです。
また、主要部分に紐づく形であっても、売上との比較でコストの方が高い場合、割に合わない投資であり、ビジネス上高く評価できる対応ではないことになります。
例えば、一等地にオフィスを構えたと仮定すると、それが営業上有利に働くのか、優秀な人を雇うために有効に働いているのか等々を鑑みて、実際の売上金額と賃料で比較して良し悪しを判断する、などが挙げられます。
このように、資金投下先に対する評価(=経営の評価)を行うことで次に説明する「近い将来の予測」に役立てることができます。
近い将来の事業や施策結果を予測・共有することができる
以上の流れでビジネスモデルを捉えることによって、近い将来の業績予測を立てることができるようになります。
例えば、Googleを例にコロナの影響を考えてみます。
事業のコアとなる「質の高い検索エンジン」に対しては影響はないと考えられますが、「企業からの広告費」については影響がありそうだな、と想定できます。
コロナ禍で考えられる影響とすれば、Web広告の有無に関わらず、集客できるサイトは集客数が増え、できないサイトは広告費を出すことが難しい状況になっていると考えられます。
ゆえに広告出稿の需要が減っていると考えられ、収入に影響がありそうと考えます。
このように、ビジネスモデルを流れで捉えることによって、あまり詳しくない企業や業界についても、近い将来の状況を予測することができるようになります。
まとめ
- 売上の源泉を把握する
- 商流から強み・弱みを導き出す
- コストから経営を評価する
の3段階でビジネスモデルの理解を進めると、効率的にコアの流れを把握できることをご紹介しました。
ビジネスモデルキャンバスを用いて、ビジネスモデルの理解を進める際は要素をパズル的に埋めるだけではなく、流れを持って特徴を捉えるようにしましょう。